■スバル+ミソラ    「音色」■



★流星1(ゲーム設定)★

スバルとミソラが初めて出会ってブラザーバンドを結ぶところの話。
ロックマンVSハープノートとかミソラとスバルの過去話とか。
スバルが自分と同じ境遇のミソラを諫めるシーン、大好きです!


妄想が妄想を呼んで、ゲームとはかなり違っているのですが・・・・。


※ブログにUP済みのものは文字数制限のためかなりの内容を削っておりました。
こちらは削る前の原稿なのでブログの時よりかなり長いです。

文字数オーバーとか気にしなくっていいって素晴らしい!










「ウォーロックーーーーー!いないのかーーーーーー?!」




ビジライザーをかけてあたりを捜しまわるスバル。
いつもスバルのトランサーの中にいるはずのウォーロックが朝起きたらいなくなっていたのだ。



ウォーロックは仲間を裏切り、追われている身だ。意味もなくうろつくとは考えにくい。
早朝の少しひやりとした空気の中、スバルはコダマタウンを早足で駆けていく。



「もう、どこいっちゃったんだよ・・・・・世話の焼ける宇宙人だなあ・・・・・・・!」



ぼそりと愚痴をこぼすスバルだが、内心はウォーロックが心配なのだ。

今まで他人とのかかわりを避けてきたスバルが、少しずつではあるが
ウォーロックと一緒にいることを楽しいと感じるようになってきている。


以前のスバルならばこのようなことはしなかっただろう。


ウォーロックを捜しつつコダマタウンのメインストリートに出てみるが、
今日は休日のためかほとんど人通りはない。
静かな街を駆けるスバルをみつけて彼を呼び止める声があった。





「お!なんだ、スバルじゃねえか!」
「早いですねえ、どこかへおでかけですか?」




「・・・・・・・・・・またキミたちか。何か用?」





スバルを呼び止めたのはゴン太とキザマロだった。
なにかと自分にちょっかいをかけて無理矢理学校に連れ出そうとする委員長軍団。
軍団長のルナがここにはいないにしてもスバルにとってイヤな相手であることには変わりない。
あからさまにイヤそうな態度で彼らに向き直る。





「なんだよ、せっかく声かけてやったのに、なあ!」
「そうですよ!今はたまたま僕たちの機嫌がいいから声をかけてあげようって話になったのに。」



「・・・・・・・・余計なお世話だよ。ボクだってヒマじゃないんだ。もう行くから。」

「僕たちだって今から大忙しなんですっ!今日の響ミソラのコンサートチケットは先着順なんです!」
「そうだそうだ!だからこうやって早起きしてチケット取りに行くんだよ、オレたち!」




「ヒビキミソラ?・・・・・・・・・なにソレ、新しいアイドル?」



「お前、ミソラちゃんのこと知らねえのかよ?!」

「・・・・・・・・・・・・・知らない。ボク、アイドルとか興味ないし。」
「ミソラちゃんはアイドルじゃありません!今人気のシンガーソングライターなんですっ!」
「どっちだっていいよ、ボクにはカンケイないし。・・・・・・・・・じゃあね。」


「お前なあ!そんなセリフはミソラちゃんの歌聴いてからにしろよなぁ!」
「今度新曲の配信データあげますよ!君も男ならきっと彼女の魅力がわかるハズですよ!」


「ああ、もう、うるさいなぁ・・・・・・・・・・。」


ゴン太たちのことなどおかまいなしにスバルはせかせかとその場をあとにする。


ウォーロックを捜して展望台の前までやってきたスバル。
展望台へ続く階段を登る途中でスバルはふと足を止める。




「ん・・・・・・・・・?なんだ?ギターの音・・・・・・・?」




展望台から聴こえるギターの音色。


聴きなれないメロディを不思議に思いつつも、スバルは階段を登っていく。
そこには展望台のベンチに腰掛け、ギターの弦を弾く少女の姿があった。


肩まで伸びた外側にハネた茜色の髪と大きな瞳が印象的な美少女だ。
フード付きパーカーに短いホットパンツ、底の厚いブーツといったボーイッシュな装いがよく似合っている。

恐らく歳はスバルと同じくらいだろうか。

少女はギターを奏でながら鼻歌まじりに音程を整えている。作曲中なのだろうか。
突っ立ったまま彼女のその様子をみつめていたスバルの気配に気づき、少女は顔を上げる。


「ん・・・・・・・?あ!ごめんね、展望台に用事?すぐどくから待ってて。」

「あ、いや、違うんだ、ギターの音が聴こえたからなんだろうって思って・・・・・・・・」
「えへ・・・。今新しい曲を作ってるんだけどなかなかうまくいかなくって。」
「そうなんだ。」



少女は軽くスバルに笑いかけるとギターの弦を弾き出した。
ギターのメロディにあわせて彼女が歌を紡ぎだす。

どこまでも美しく響きわたるような彼女のソプラノにしばし心奪われてしまうスバル。






「(すごい・・・・・・・・!なんてきれいな声なんだろう・・・・・・・・・!)」






しかし少女から紡ぎだされた歌は彼女の活発的な装いとは裏腹に美しくも物悲しいバラードだった。
ふいにギターの弦を弾く手を止める少女。歌に聴き入っていたスバルはあれ、と彼女をみつめる。

スバルの目に映ったのは彼女の大きな瞳からこぼれ落ちる大粒のなみだだった。




「ど・・・・・・、どうしたの?」




今まで目の前で女のコに泣かれたことのないスバルはただおろおろするばかり。
少女はなみだをぬぐい、潤んだ瞳のままスバルにわらいかける。







「ごめんね、なんでもないよ。歌・・・・・・・・聴いてくれてアリガト・・・・・・・・・。」






少女はそのまま展望台の下へ続く階段を駆け下りていってしまう。
状況の飲み込めないスバルは彼女の去ったあとをただ呆然と見つめるしかなかった・・・・・。




『おお?何だよスバル、もしかしてヒトメボレってヤツかぁ?』  
「うわっ?!」



聴きなれた声がすぐ耳元から聞こえてきた。
スバルは慌ててビジライザーをかけて声のしたほうに向きなおる。


「いきなり話しかけてくるなよ、ウォーロック!・・・・びっくりしたあ・・・・・・。」
『あんまりにもいいフンイキだったもんだからよ、ジャマすんのも悪ィと思ってな。』   
「な、なに言いだすんだよ!そんなんじゃないってば!」   

『クククッ・・・・・・・・・カオ赤いぜ?』 

「う、うるさいなあ、もう!」

ウォーロックにからかわれ、つい照れてしまうスバル。
からかわれてちょっとムッとした表情を浮かべるスバルにウォーロックはマジメな顔で訊ねる。


『オイ、スバル。あのムスメは何モンだ?』

「さあ・・・・、ボクもさっき会ったばかりで名前も訊いてないんだ。」
『あのムスメの奏でる音楽から孤独の波調を感じた。』
「どういうこと?」
『FM星人はニンゲンの孤独の心のスキマに入り込む。あのムスメは格好の餌食だぞ。』

「あのコが・・・・・・・・?」


ウォーロックの言葉で彼女のことが急に気になりだすスバル。
いったいあのコになにがあったというのだろうか・・・・・・・・・・?






「さあ!今日こそ学校に来てもらうわよ、星河スバル君!」
「何度来たってムダだよ。ボクは学校になんか行かない!」



翌朝。いつものように委員長軍団がスバルを学校に連れて行こうとスバルの家にやってきていた。
スバルとルナはどちらも引かず、火花を散らす。

キナ臭いふたりとは裏腹に、いつもの元気がまったくないゴン太とキザマロ。


「・・・んもう!ふたりともいつまで落ち込んでるのよ!あなたたちからも彼にひとこと言ってやって!」



「はぁ・・・・・・・・・(沈)」



「何よもう!響ミソラのコンサートが中止になったから何よ!コンサートくらいまたあるでしょう?!」
「委員長!ミソラちゃんが急病だから中止になったんだぜ?心配になるだろ〜?」




「・・・・・・・あっそう・・・・・・・・(汗)」




力説するゴン太に思わず肩の力が抜けてしまうルナ。
そのルナのスキをついてスバルは彼女をおしのけ玄関を飛び出す。


「ああっ!しまった、逃げられたわ!ふたりとも、急いで追う・・・・・もう!役立たずっ!」
「はああ・・・・・・・、ミソラちゃあん・・・・・・・・・・(沈)」



委員長軍団を振り切ったスバルは足早に展望台まで駆けてくる。
階段の上の展望台を見上げ、スバルは昨日の少女のことを思い出す。




「・・・・・・・・あのコ、今どうしてるんだろう・・・・・・・・・。」




スバルがそうつぶやいたそのとき。かすかに耳に届いたギターの演奏。
展望台の上からのようだ。スバルはあわてて階段を駆け上がる。
そこには昨日と同じようにベンチに腰掛けギターを奏でる少女の姿があった。





「はぁ、はぁ・・・・・・、また、逢えた・・・・・・・・・・・っ。」





息をきらせながらつぶやくスバルに気づき、演奏の手を止める少女。

「君は昨日の・・・・・また逢ったね。どうしたの息きらせちゃって。」
「キミの・・・・・ギターの曲が聴こえたから・・・・・・・・・・・」






「・・・・・・・・・なに?君、あたしのファン?」






すこし眉をしかめ、怪訝そうに訊ねてくる少女。
しかしスバルは彼女の言っている意味がわからずキョトンと切り返す。



「ファン?・・・・・・・・なに、キミって有名人なの?」

「あれ?なんだ、違うんだ。ていうかあたしのこと知らないんだね。」
「えっと・・・、ゴメン。ボク、流行りものとか詳しくなくて・・・・・・・。」
「そうなんだ。学校で友達とそういう話しないの?」




「・・・・・・・・・・・・・。」




少女の問いかけにスバルは言葉を詰まらせる。
自分は今登校拒否をしているのだ。そんな話なんてできるワケがない。
黙り込んでしまったスバルにどうしたのか、と少女が訊ねようとしたそのとき。





「ミソラーーーー!どこ行ったんだぁ〜〜〜?」
    



「げっ!や、やばい!君、こっち来てっっ!」
「えっ?えっ?!ちょ、ちょっとぉ!」




階段の下から誰かの声がした。少女はあわててスバルを連れて茂みの中へ飛び込む。
茂みの中でもみくちゃ状態になってしまうスバルと少女。
スバルは女のコと密着していることが恥ずかしいのか、頬を紅潮させたまま固まってしまう。






「・・・・・・・・おっかしいなぁ、ここにもいない・・・・、どこいっちまったんだよミソラ・・・・・・」






サングラスにあずき色のスーツといった、
お世辞にもカッコイイとはいえない装いの小太りの男が必死に誰かを捜しているようだ。




男が捜しているのはどうやらここにいる少女のようだが・・・・・・・・?


男があきらめて展望台から去っていくのを確認すると、スバルたちは茂みの中から飛び出す。






「ふう・・・・、危なかったあ・・・・・あ、いきなり茂みに連れ込んじゃってごめんね。大丈夫?」
「・・・・・・・・・・・・・う、うん・・・・・・・・・・・・(照)い、今のは誰なの?お父さん?」




「ううん。あれはあたしのマネージャー。・・・・・・あたし逃げ出してきちゃったんだ。」
「ええっ?!」






逃げ出してきたと打ち明ける少女の言葉にスバルは思わず大声を出してしまう。
昨日の彼女のなみだといい、いったいなにがあったのだろうか?







「・・・・・・・お願い!あたしをどこかにかくまってくれない?!」


「ええっっ?!い、いきなりそんなこといわれたって・・・・・・・・・・・(焦)」






「あたし・・・・・・・・・もう、歌いたくない・・・・・・・・・・」







その場にへたりこみ、今にも泣き出しそうな少女の姿をみてスバルは胸が痛んだ。
どんな事情があるのかはわからないけれどこのままこのコを放っておくわけにはいかない。



「わ、わかったよ、とりあえずボクの家にきなよ。それならさっきの人も来れないだろうし。」
「あ・・・・・・・・、ありがとう・・・・・・・・・。」





スバルは少女を自分の家に連れて行くことにした。
母・あかねはちょうどこの時間はパートに出ていて留守だ。
母親の留守中に女のコを連れ込むなんて自分はなんてふしだらな息子なんだろうと思いながらも
少女を自分の部屋に招き入れる。




「・・・・・・・・君の部屋って広いんだね、すごい!」
「そ、そう?適当にテレビとかつけてていよ。何か飲み物もってくる。」



スバルは飲み物を取りにリビングへ降りていく。

ジュースとお菓子を用意しながらスバルは深いため息を漏らす。




「はぁ・・・・・・・。まいったなぁ。母さんになんて説明しようかな・・・・・・・。」


『いや、確実に説教じゃねえの?』
「・・・・・・だよねえ・・・・・・。でもいつまでも母さんに内緒にできるとは思えないよ。」
『じゃあ何でつれてきたりしたんだよ?』
   

「だ、だってあのままほっとけないじゃないか。」

『・・・・・・・やっぱりヒトメボレか。まあ、オレはオマエが誰といちゃつこうが構わねえが。』
    


「なっ・・・・・、なに言ってんだよ!何もしないよう!(恥)」
『照れるなよ。そういうトコはまだまだガキだな。』
    


「ふんっ!」


ふてくされたままお茶菓子を持って自室へ戻るスバル。



スバルの部屋では少女が本棚の本をめずらしげに眺めていた。
    



「どうしたの?なにかめずらしい本でもあった?」


「君・・・・、星が好きなんだね。本棚も部屋も星のことばかり。」
「うん。ボク、将来は宇宙飛行士になりたいんだ。」
「へえ・・・・。ねえ、これ君の名前?」



少女は机の上に置いてあった通信学習の本の表紙に記載されているスバルの名前を指す。



「あ、うん。そういえば自己紹介がまだだったね。ボクは星河スバル。キミは?」
「あは!名前も星づくしなんだ!あたしは響ミソラ、ヨロシクねスバル君!」
    



「・・・・・・・・響ミソラ?その名前どこかで・・・・・・・・・」




そのどこかで聞いた名前にスバルは思考をめぐらす。
そして今朝のゴン太のセリフを思い出す。




「キミが響ミソラ?でも急病でコンサートが中止になったってゴン太が・・・・・・・」

「なんだ、あたしのコト知ってるんじゃん!てかコアなファンしか知らないよ、コンサートのことなんて!」
「いや、たまたま今朝そういう話をきいただけだよ。昨日のコンサートと
今キミがマネージャーから逃げてること、何か関係あるんでしょ?」




「・・・・・・あたしはお金のために歌を歌うのはイヤなの・・・・・・・」
    


「どういうこと?」
「あたしの歌はママを喜ばせるためだったのに・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・“だった”?」




ミソラは表情を曇らせたまま今まで自分に何があったのかを話しはじめた。




「あたしのママは身体が弱くてずっと入院してたんだ。・・・・ベッドから離れられないママのために
あたしいつも歌を歌ってママに聴かせてあげてた・・・・・・・。」



ぽつりぽつりと話しながらギターを握りしめるミソラ。




「ママをもっと喜ばせてあげたくて、あたし必死に練習したの。このギターは
あたしがオーディションに合格したときにママが買ってくれたものなの。・・・・・・・・・・でも・・・・・・・・・」




ミソラの目からなみだがこぼれ、ギターの弦の上に落ちる。




「もう・・・・・・・ママにあたしの歌、聴かせてあげられなくなっちゃった・・・・・・・・・。」
「もしかしてキミのママは・・・・・・・・・。」
    




「うん・・・・・・・・、3か月前に・・・・・・・・・・。あたしが歌をやめたらママ天国でガッカリするかなあと
思って今まで歌ってきたけどもうダメ・・・・・。マネージャーはお金のことしか考えてないし・・・・・・。」




なぜ彼女の歌に孤独の周波数があったのか。
スバルとウォーロックはここで初めて納得した。
    



「あたし、ひとりじゃ歌えないよ・・・・・・・・・・・・。」
    

「ミソラちゃん・・・・・・・・・・。」




唯一自分の心の支えだった母親を亡くし歌に希望を見出せずにいるミソラ。
そんなミソラと自分の境遇が少し似ていると感じたスバルは彼女に親近感を抱く。



そのとき。来客を告げるチャイムが鳴った。
ミソラにひとことことわって玄関に向かうスバル。
    



「ミソラーーーーーっっ!出てこーいっ!」
「うわっ?!」




スバルがドアをあけるやいなや、ミソラのマネージャーが飛びこんでくる。
驚きのあまり目を丸くするスバルにつかみかかるマネージャー。



「おい!君だな、ミソラをかくまっているのは!」
「な、なんのこと?ボク知らないよ!」
「とぼけるな!君がミソラと一緒にいるところを見たって人がいるんだぞ!」



マネージャーの言葉にぎくりとするスバル。
こんなところまで追ってこられるとは正直計算外だ。



「に、似た人でしょ?ボク、心あたりなんてないもの。」
    

「・・・・あくまでシラを切る気だな。いいか、君のやったことは誘拐なんだぞ。
これ以上シラを切るなら君を訴えるしかなくなるが・・・・・、どうする?」
    

「・・・・・・・・・・・え?」


いきなり話がおおごとになってしまい、内心焦るスバル。
でも嫌がる少女に無理やり歌わせようとするこの男が少し憎らしくもあったため、白状する気にはなれない。

にらみあうスバルとマネージャー。その張りつめた空気をかき消したのはミソラの声だった。
    


「金田さん、もうやめて!スバル君は悪くない!」     


「ミソラちゃん・・・・・・!」




「いいコだ、ミソラ。さあ、事務所に戻るぞ。昨日の謝罪をしなきゃならないんだからな。」

「あたし・・・・・・・・・・もう歌いたくないよ・・・・・・・・・・・・。」
「何を言ってるんだ。お前の我儘のせいでどれだけの損害が出てるのかわかってるのか?」



マネージャーはミソラの腕を強引につかむとスバルの家からひきずり出そうとする。



「いた・・・・・・・!金田さん、痛い・・・・・・・!」
    
「やめろっ!!」


スバルはミソラをつかんでいたマネージャーの手をはねのけて制止する。
    


「嫌がる女のコを無理やり連れていくのがマネージャーの仕事なのか?!」

「ああそうだ!これは遊びじゃない、仕事なんだ!ミソラにはその自覚が足りないんだよ!」
「仕事だってたしかに大切だけど、このコの気持ちを考えたことがあるのか?!」
「うるさいな!お前には関係ない話だろう!」


「うわあっ!」



スバルの言葉に苛立ちを覚えたマネージャーはスバルを思い切り突き飛ばす。
大人の力で突き飛ばされたのでは小柄なスバルもたまらない。
玄関の壁で頭をぶつけ、痛みでそのままうずくまってしまう。



「痛たた・・・・・・・・・・・!」
    


「やめて、金田さん!あたし帰るから、スバル君にひどいことしないで!」
「やっとわかってくれたか。・・・・・・行くぞ。」
    



「スバル君・・・・・、ごめんね。ありがとう・・・・・・・・・・。」




うずくまるスバルに淋しく微笑むと、ミソラはマネージャーとともに玄関をでていく。
くやしさに震えるスバルだがどうしようもなかった・・・・・・・・・・。




『――――――!スバルっっ!』




トランサーの中のウォーロックが血相を変えて飛び出してくる。     

『オイ!すぐあのムスメを追いかけろ!』
「で、でも・・・・・・・。」
『FM星人の周波数を嗅ぎつけた!すぐ近くにいやがる!』
    




「ミソラちゃんが危ない・・・・・・・!」





あわてて走り出すスバル。




「さあ、乗るんだ。」
「はい・・・・・・・・。」




『・・・・・フフフフ・・・・・・、かわいそうなコ・・・・・・・・・・。』
    
「だ、誰?!」


車に乗ろうとしていたミソラに妖しくささやく女の声。
ミソラが声のほうに振り向くとしそこには宙にうかぶ青いハープが言葉を発していた。
    


『アタシはハープ。あなたの味方よ。』
    



「え・・・・・・・・・・?」
『あなたの歌はあなたの手で守らなきゃダメ・・・・・・・。』
「ど、どうしてそのことを・・・・・・・?」
『わかるわ。アタシもあなたと同じく音楽を愛してるもの。』
    


「・・・・・・・・・・。」
『あなたの歌を聴かせてもらったわ。とても美しかった・・・・・・・。』





さらに妖しく微笑むハープ。自分の身体の一部である弦を弾き、美しい音色を奏で始める。
ハープの奏でるメロディに心奪われるミソラ。
寂しさと悲しみでぽっかりとあいた心の一部を埋めていくようなメロディ・・・・・・・・。
    



『あなたの歌を汚すヤツらに仕返ししてやりなさい・・・・・・・・。』
    


「・・・・・・・・・・・・あたしの歌はお金のためじゃない。」
『そうよ、アタシが力を貸してあげるわ・・・・・・・・。』



ハープはさらに妖しい笑みをうかべ、ミソラに迫る。
ミソラの身体にハープが触れた瞬間、まばゆい光があたりを包む。
その光の中から人影が現れる。・・・・・・しかしその影はミソラのものではなかった。

    



「・・・・・・・ハープ・ノート推参!」


    

「わわっ?!ミ、ミソラどうしたんだそのカッコは?!」




いきなりの出来事にわけがわからず混乱してしまうマネージャー。
無理もない。今のミソラはもうただの人間ではないのだから。


FM星人・ハープとミソラが電波変換した姿・・・・・・・ハープノートは
マネージャーをにらみつけると手に持っていたギターを構える。
    



「ショックノート!」




ハープノートの両脇にアンプが出現し、
そこから発せられた音波はマネージャーをたやすく気絶させてしまう。
倒れたマネージャーを見やり、ぼそりとつぶやくハープノート。

    


「あたしの歌は・・・・・あたしが守るんだから・・・・・・・・・!」
『その調子よミソラ・・・・・・・。』
    


「ミソラちゃん!」




駆けつけてきたスバルがミソラの名を呼ぶ。
その声に静かに振り返るハープノート。
    


「スバル君・・・・・・。あなたは傷つけたくない。もうあたしに構わないで・・・・・・。」
「ミソラちゃん!ダメだよ、目を覚まして!」



スバルの叫びも虚しく、ハープノートは電波空間に消えてしまう。

    


『追いかけるぞ、スバル!クソッ、ハープのヤツめ何考えてやがんだ・・・・・・・!』
    


「うん!電波変換!星河スバル、オン・エア!」


スバルはロックマンに電波変換し、ハープノートを追って電波空間に消える。
ハープノートは自分の音楽を汚すファンへの制裁をと、街の人間を無差別に襲い始めた。
    



『その調子よ、ミソラ!』     



「そこまでだFM星人!ミソラちゃんを解放しろ!」


「・・・・・・・・・・!ス、スバル君・・・・・・・・・?」




バイザーで顔はハッキリみえないのだが、そのしゃべりかたと声でロックマンの正体に気づく。
ロックマンは静かにバスターを構えてハープノートに近づいていく。

    


「どんな理由があったって無関係な人を傷つけるなんてダメだよ、ミソラちゃん!」
「あたしのジャマをするならいくらスバル君でも容赦しない!ショックノート!!」




ハープノートはギターを構え、音波攻撃を次々に繰り出す。
音波は巨大な音符の形状を成し、ロックマンに襲いかかる。
ミソラ相手では反撃もできず、ひたすら攻撃をかわすしかないロックマン。
    


「うわっ!・・・・ど、どうしたらいいんだ・・・・・・・・。」
    


『攻撃しろ、スバル!ハープからあのムスメを助けるには電波変換を解かせるしかねえ!』
「で、でも女のコを攻撃なんてできないよ!」  

『甘ッチョロイこと言ってんじゃねえ、このバカ!』
    


『あらぁ、優しいボウヤね♪どこかの乱暴者とは大違いだわ。』
『ハープ・・・・!テメエいったい何やらかそうってんだ!』
『アタシはミソラに力を貸してあげたいだけよ?フフフ・・・・・・・・』

   

『チッ・・・・!相変わらずうさんくせえオンナだ!オイ、スバル!
あのムスメのこと助けてえならさっさとブッとばしちまえ!それが今できる最善策だ!』
    


「わ・・・・・・、わかった・・・・・・・・!」



ロックマンは腹を決めてハープノートと対峙する。
相手の手の内がわからないので威嚇程度のロックバスターを放つ。

    

『甘くみられたものねえ!アタシたちにそんな攻撃、通じないわ!・・・・・ミソラ!』
    



「ショックノート!!」     
「くっ・・・・・!」


音波攻撃を上空に跳んで回避するロックマン。
しかしそれを狙ったかのようにギターを構え、ロックマンを睨みつけるハープノート。
    


「マシンガンストリング!!」
「なっ・・・!ギ、ギターの弦が・・・・うわあああっ!」



空中で身動きの取れなくなったロックマンにハープノートのギターから弦が伸びてロックマンに絡みつく。
弦を通して脳に響いてくる音波にクラクラし、縛られたまま落下するロックマン。


    

「う・・・・、ぐぐ・・・・・・!」

『何やってんだ、スバル!気ィしっかり持て!』
「こ、この弦・・・・まずい、身体が痺れる・・・・・・」
    

『スバル!バトルカードだ!早く出せっ!』
    


「バトルカード・・・・・、オーラ・・・・!」
『ヌヌヌ・・・・・・ガブッ!』



ロックマンがなんとか取り出したカードをロックマンの腕をひきずりながら喰らいに行くウォーロック。
ウォーロックがカードを捕食すると、ロックマンの身体のまわりにオーラが発生し、ギターの弦を弾く。


弦が身体から離れると痺れも抜けて体勢を立て直すロックマン。
    

「あ、危ないなぁ・・・・あの弦の攻撃は気をつけないと・・・・・・・・・」
    


『気合い入れりゃあれくらいかわせただろう!手ェ抜いて闘うんじゃねえ!』
「ゴ、ゴメン・・・・・!仕切り直しだ、行くぞウォーロック!」

    

「させないっ!パルスソング!!」
「うぐっ・・・・・・・!」




ハープノートが弦を鳴らすとハート型を模した巨大音波があたり一帯に拡がる。
ロックマンはあわててバトルカードをプレデーションさせる。

    



「バトルカード・パワーソング!」





ロックマンの目の前に電波ウイルス・シシカシューが現れ、歌を歌い出した。
音波と音波がぶつかりあい、相殺されて消滅する。
    


「そ、そんな・・・・・・・・!」
    
「目には目を、音波には音波だ!」
『今だ、いけ、スバル!』
    


「バトルカード・プレデーション!ブレイクサーベル!!」

「きゃあああーーーーっっ!!」




ロックマンのサーベル攻撃がハープノートにヒットし、
バランスを崩したハープノートはそのままウェーブロードから落下していく。

ミソラの意識はそこで途切れ、電波変換を維持できなくなったハープノートはミソラとハープの姿に戻る。
    



「ミソラちゃん!」




ロックマンは空中でミソラの身体を受けとめる。
その横ではがっくりとうなだれたままのハープの姿が。
    




「あ、気がついた?」     



「・・・・・・・・ス、スバル君・・・・・・・・・・?あたし・・・・・・・・・。」




スバルの部屋のベッドで目を覚ましたミソラ。
目の前には彼女を心配しているスバルの顔があった。
    

「気分はどう?何か飲む?」     



「・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・・?」
「え?」
    



「どうして助けたの?あたしは無関係な人たちを襲ったんだよ?」
    



「・・・・・だって・・・・ボクもキミと同じだから・・・・・・・・・・。」
「どういうこと?」
    



「イヤなことを無理やりやらされる辛さとか・・・・大切な人がいなくなる悲しさ・・・・ボクも知ってる。」
    




「スバル君も誰かいなくなっちゃったの・・・・・・・?」
    

「3年前・・・・・宇宙ステーションの事故でボクの父さんはいなくなった・・・・・・・。」




スバルはここで初めて父がいなくなったこと、
そのせいで自分が学校に行けないでいることを打ち明けた。
    



「父さんがいなくなったとき死にたいって思うくらい辛かった。
大切な人がいなくなることがこんなに辛いなら、最初からそんな人を作らなきゃいいんだって思った。
・・・・だから、学校にも行かない。」

    

「友達を作るのが怖いんだよね・・・・・・・・?」
    

「・・・・・・・うん。さっきボクは偉そうなこと言ってキミを止めたけど、
ボクだって母さんがいなかったらきっと同じことをしたんじゃないかな・・・・・・・。」
    



「スバル君の・・・・・・お母さん・・・・・・・?」
    




「先生やクラスメイトは無理やりボクを学校に連れだそうとした。
ボクの辛い気持ちなんて誰もわかってくれないんだって思ってたけど、母さんだけは違ったんだ。」




スバルの脳裏にそのときのことが浮かぶ。
自分を思いきり抱きしめ、静かにささやいてくれた母・あかね。
    





“学校なんて、行かなくていいんだよ・・・・・・・・・・”     






「母さんがいなかったらボクは自分で自分を傷つけていたかも知れない・・・・・・・。」
    

「スバル君・・・・・。」
「傷つく痛みを知ってるなら、誰かを傷つけるだなんてしちゃダメだと思う。」
    



「うん・・・。あたしが間違ってた。ママがいなくなってこれから頑張らなきゃいけないのにダメだよね」




スバルに寂しく笑いかけるミソラだったが、こらえきれなくなったなみだが頬を伝う。
目を覚ましたと言ってもこれから彼女がひとりで生きていかなくてはならないことに変わりはないからだ。
    




「あれ・・・・・、おかしいな。頑張るって決めたばっかりなのに・・・・・。なんで泣けてきちゃうんだろ。」     

「ミソラちゃん・・・・・・・・・・・。」





『ああっ!スバルがオンナを泣かせてやがる!』     


「ええっ?!な、なに言いだすんだよウォーロック!」
『チキュウではオンナを泣かせたら罪になるんだろ?早くなんとかしねえとタイホされちまうぜ?』

「そんなわけないだろ!また半端な知識つけてきたな?!」


すっとんきょうなことを言い出すウォーロックにツッコミつつ、泣きつづけるミソラを見つめるスバル。
ウォーロックの言うことはともかくミソラをこのままにしておくのはかわいそうだ。
彼女の力になりたい。そう思ったスバルはミソラに意外な提案をした。
    






「ボ、ボクのブラザーになってくださいっっ!」     








「え・・・・・・・・?」
    
「ひ、ひとりで頑張るのも確かに大切かも知れないけど、それじゃ寂しいと思うんだ・・・・・。だったらさ、
ボクらふたりで一緒に頑張っていこうよ。そのほうがお互いのためにもいいんじゃないかな・・・・・。」



はじめてのブラザー交渉に緊張と照れでガチガチのスバル。
自分と同じ境遇のミソラを客観的にみつめることでスバルの心にも変化が表れたようだ。
    


「うん・・・・・・。スバル君、ありがとう・・・・・・・嬉しい・・・・・・・・!」     

「わわわっ?!」



ベッドで横たわったまま、スバルを自分のほうへ引き寄せ、抱き寄せるミソラ。
ふいをつかれたスバルはそのままミソラの上に倒れこんでしまう。・・・・・・・・・そのとき。     



「たっだいまあ、スバル!ねえ今日駅前のケーキ屋さんで新作シュークリームが・・・・・」




「あ。」


上機嫌でスバルの部屋に入ってきたあかねの目に映ったのは・・・・・・・・・
ベッドに横たわる少女の上に倒れこんでいる自分の息子だった。
    




「お、おかえり母さん。こ、これは違うんだ、ちょっとその場の勢いでつい・・・・・・」     



「・・・・・・・・・その場の勢いでつい・・・・・・・・・・?」
    

「あ、いや、そういう意味じゃなくってぇ・・・・・・・・・・・(汗)」




弁解すればするほど立場の危うくなっていくスバル。
思春期の男のコの母親としては放っておけない問題だ。
    



「ねえスバル。母さん別にスバルが彼女を作るのはいいと思う。
・・・・でもそういうことするのはまだちょ〜っと早いんじゃない?」
    





「ごっ・・・・誤解だよう!ボクそんなつもりじゃないよう!」






真っ赤な顔で母親に必死に弁解を続けるスバル。
あかねが怪訝そうな顔をすると、なみだ目になりつつもなお弁解する。
そんなスバルを横目でみつつ、笑いをこらえているミソラ。
スバルの反応が可愛くて仕方ない様子だ。
    



「あは、スバル君ってお母さんの前じゃとっても可愛いんだね♪」

「ノンキなこと言ってないでキミからもなんとか言ってよ、ミソラちゃん!」
「見てて面白いからしばらくほっとこうかな〜♪」
    




「ダメ〜〜〜〜〜〜っっ!!」     






『ウフフ、なんだかココも楽しそうね。しばらくノンビリしようかしら。』
『ハア?!ジョーダンじゃねえ!テメエにそんな近くにいられちゃ落ち着いて寝れやしねえ!』
    


『アラヤダ、ウォーロックったらダイタン発言しちゃってぇ♪』
    
『そういう意味じゃねえ!』



ミソラとスバルのやりとりをみて、楽しそうに笑うハープ。
しかしウォーロックはハープが苦手なのだろうか、アタマを抱えてしまう。
寝首を掻かれるのが心配なのだろうが、どうやらそれだけではないようだ。





同じ境遇のスバルとミソラ。お互いの辛い気持ちをわかりあえるからこそ支えあえる。
今のふたりの心の支えは初めて結んだブラザーバンドなのだ。








END。2007/07/24 作成29








●あとがきもどき●

似たもの同士のミソラとスバル。
だからなのかこのふたりの話を書くととても仲良しさんになります。
本音で語り合える友達なんだけど、やはり男のコと女のコ。
スバルが早くもミソラの尻に敷かれちゃってます★

ウォーロックとハープは「お前ら絶対過去に何かあっただろ!」
ってノリで書いてみました。

こやぎ的には実は元恋人じゃね??
とか勝手に思っちゃってるんですが、どうですかね。




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